2021/09/17

晴れのち雨/1012hPa/体調:夕方くらいからよくなくて気圧のグラフ通り

調子がいいつもりだったんですけど、通院後に歩き回っていたら突然「これは弱っているのでは?」と言う『気配』がやってきてしまった。実際にMiFitが獲得していたGPS情報によれば、今日は最初から歩くペースがやや遅かったし、『気配』がやってきてからはさらに遅くなっている……と言うのがはっきりと形に残っている。

「運動によってうつは改善される」は個人の感覚としては「ない」んですよね。運動習慣があると外出して日光浴びたりなんだりするのは効果ある気がするんですけど、運動そのものには別にない。運動はHPとMPの上限を上げてくれると思うけど、うつは「割合ダメージを伴うバッドステータス」っぽさがある。

読んだ。

スチュアート・タートン『イヴリン嬢は七回殺される』

「英国カントリーハウスを舞台にした館ミステリ」×「タイムループ」×「人格転移」×「デスゲーム」の話題作、ようやくがんばって読みました。とてもおもしろかった。でもほんと、頑張らないと読みきれない厚さと文章密度でした。
英国文学の読み味で「タイムループで繰り返される殺人」ってだけで読み価値を感じた人、たぶんもう読んでいるだろうけど当然お勧めです。西澤保彦好きな人も読んで損はないと思う。

ただ紙書籍だと2200円もして、文字がみっつり詰まっていて、文章にも厚みがあって親切ではないので「読み進めるのに必要なカロリー」がただ事ではないと言う重大な欠点があります。「そこが楽しい」って脳がスパークしてしまって、この心理状態は「講談社ノベルスで分厚いければ喜んで買って帰っていた頃の自分」のそれで、懐かしい、古い自分と顔を合わせた気持ち。40%を越えたところあたりから「もうずっと読んでいたいな」と言う気持ちになってしまった。今の健康状態では完徹で読み切るができなかったのが悔しかったです。

本編はホットスタートです。主人公である人物は「記憶喪失状態で、名前すら覚えていない、しかし親しい人物が殺されかけようと理解している」と言う状態。その混乱の中たどり着く、それほど手入れされている様子もない洋館『ブラックヒース館』で行われている不可思議な仮面舞踏会。心優しいイヴリンに出会い――そして目を覚ました時、自分は別人になっていた。混乱と恐怖、徐々に理解する「ルール」。謎の監視者〈黒死病医師〉、自分を苦しめようと追跡してくる〈従僕〉。イヴリンの死とそれに纏わる数多くの謎、かつてブラックヒース館で起きた悲劇。主人公はそれらを自分の限られた時間と命を使って解き明かしていく。

少し暗い画面の映画を見ている様な質感の文章で綴られる事件が、とても『立体的』なんですよね。それはとても一人の視野と時間で見通せるものではなく、「人格が移る、つまり宿主が変更される」からこそ見えてくる構造となっている。
そして宿主の人格の影響を受け、混乱や葛藤を抱き苦しみながら前進し続ける主人公の使命感、高潔さがすごく魅力的なのですよ。肉体が変わり、その精神のあり方が変容しようとも、変わることのないものがある。いや、むしろ物語が進むごとに成長していく、それはおそらくは「誠実さ」である。

このテイストに近いジャンルの作品としては、ジョジョの奇妙な冒険のそれも第四部が浮かびます。あの話もほぼずっと、吉良吉影と言う怪物を、ただ善良さや誠実さで人間が追い詰める物語なので、全然違う作品にも関わらず「近い」。あと宿った肉体が持つ思考方法を利用して事件を解き明かす流れに、スタンドバトルっぽさがちょっとあります。

読み終わった時には、自分でびっくりするくらい爽やかな気持ちでいられた。こう言う読書体験はあまりない。だいたいこのくらい分厚い本を読んだ後は「最高のバッドエンドだ……うふぇふぇふぇふぇ」みたいなツラしていた人生だったしな。

コメント

タイトルとURLをコピーしました