2020/06/05

曇り/1008hPa/体調:まあ普通くらいかな。

病院行ったり本を読んだりシンフォギア回したりしてました。

https://dora-world.com/daichohen2020sp

ここで名作「のび太と竜の騎士」の無料公開期間中なので宣伝しておきます。面白いから読め。

「のび太と竜の騎士」は大長編ドラえもんの中では実は異端の作品です。なにが異端かと言えば、明確な敵がいない話なんですよね。だいたいの大長編ドラえもんは冒険する先でなんらかの障害となる敵と出会い戦う話なのですが、「のび太と竜の騎士」にはそう言うのはいません。相手はわかりあえないはずの人間であるスネ夫達を受け入れてくれますし、誤解やすれ違いの解消が行われる、それでハッピーエンドと言う感じです。世界が滅びるレベルの危機が多い大長編ドラえもんの中では珍しいですよね。いや世界はこれ以上なくはっきりと滅びるんですけどね。

基本的にはただ異文化社会で交流してちょっとした摩擦が起き、その後ドラえもんのタイムマシンを介さずに「恐竜時代を見届ける」と言う話なんですよね。あれで面白いの、ほぼほぼ「世界観そのものが面白い」「その見せ方がうまい」って事なんで、SF作家藤子・F・不二雄の本領が発揮されている大長編ドラえもんこそ竜の騎士ではないかなみたいに思います(一方で恐竜ものとしては絵としてのインパクト重視で、正確さはありません。白亜紀末の北アメリカにはいない恐竜がたくさん出てきますしみたいなオタクの愚痴もけっこうあるんですが、これは全部置き去りにしていいところの話をします)(一方で白亜紀の森の描きこみすげーよ)。

地下世界では化石燃料を使っている描写がない、それどころか空気を汚すタイプの動力機関は発達していない。しかし科学文明そのものはむしろ地上よりも発達している。閉鎖空間だからか、空を飛ぶ機械というのも珍しいものと描かれている。レントゲンなどはあるらしい。ガラスの存在についても言及がある。例えばビー玉は不思議なものとされるし、窓ガラスがハマっていない窓の様子がある。みたいな情報をガンガン出してきて、異世界旅行させられるんですよね。
その後にステノニコサウルス(トゥロオドン)の置換化石。黄鉄鉱の置換化石そのものはアンモナイトの化石などがあるのですが、恐竜のものとなると地上にはない。祭政一致の恐竜族の文明にマッチしている背景。

さて、ディノサウロイド(恐竜人間)の概念が提唱されたのは1982年、昨年末なくなったカナダの古生物学者ラッセルによるものでした。また恐竜が絶滅したのがなんらかの天体が衝突したからと言う天体衝突説は1980年の事ですね。K-Pg境界の発見が1977年です。そして天体衝突説がまとまったのは1990年代の事でした。80年代くらいの図鑑を読むと、恐竜の絶滅の原因は不明と言うことになっており、火山の噴火、疫病、哺乳類が卵を食べ尽くした、便秘、その他諸々が取り上げられていました。天体衝突説はそれほど一般的ではなかったです。
一方で「のび太と竜の騎士」が発表されたのは1986年の事ですから、これは「最新の研究や学説をとりこんで作品に組み込んだ」と言って差し支えがないでしょう。時代から考えるとまさに「サイエンスフィクション」であると言っていいでしょう。

なおこれ以降、大きくイメージが変わるのはやはりジュラシック・パークをまたなくてはいけませんでした(これが1990年発表ですから、ジュラシック・パークは本当に凄かったんですよねと思います。あと古生物の研究ペース、1980年代からもう早かったんだなあと思います)。

なんでF先生がこれらの学説を話の中心にとりこんだSFを大長編ドラえもんでやったのかは、少し不思議な気もしますね。でもドラえもん短編ではこんな感じの話も多いんですよね。連載の初期では恐竜族が善か悪かも決まっていなかったらしいです。そのへんが逆にこの柔軟なSFらしさを作品に与えたのかもしれません。きっちりレール決めて悪と戦う話にしていたら、この空気はなかったと思うんですよね。

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