2020/09/12

曇り/1013hPa/体調:一日中寝てた

午前中は家族の食料品の買い出しなんかに行ってきて、けっこう今日は行けるのでは? なんて思っていたのですが、午後から低気圧がやってきて体調が完全に崩壊しました。その後ベッドの上に寝ていた以外の記憶がないよ。

読んだ。

斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』。本格ミステリとしてこの作品が書かれた事はかなり注目に値すると思います。神が遣わした天使が実在する世界。ただし天使が人類になす事は唯一つ、二人以上の人間を殺した物を地獄へ落とす事。これによって世界のルールは大きく書き換わる。戦争や死刑、そして連続殺人は行われなくなってしまったのです。その代わりに台頭してきたのは「どうせ二人殺すのも百人殺すのも同じ」と言う犯罪行為。その中で自らの存在意義を大きく失った探偵・青岸焦は天使を信奉する大富豪の館へと招かれ、この世界からは消えてなくなったはずの連続殺人事件に巻き込まれる。と言う、バリバリの特殊環境本格ミステリです。
この物語では前述した通り、神の遣わした天使という存在によって世界が大きく変貌しています。ですが、実はもう一つ同じくらい世界を変貌させた、あるルールが実装されているのです。ミステリ読者ならわかりますね。探偵です。少なくても主人公である青岸焦は、登場人物たちから「殺人事件を解決する能力を持つもの」として認識されている名探偵です。そして名探偵が実在するその場で殺人事件を起こす、これは天使に地獄に落とされるのに人を殺すのと本質的は差があまりない行為なのではないか? と言う傷跡を読者に残すのが作品なのです。

一度くらいは「コナンが実在する米花町で殺人事件を起こすやつは何を考えているんだ?」みたいな事を考えた事がないですか。名探偵が存在しているなら、それは社会に対して大きな影響を与えていると考えるべきだと思ったことはありませんか。実際名探偵コナン作中で、事件が起こる前に既に「名探偵毛利小五郎」が観測されている展開は多いように思えます。もしかすると「警察がすぐに犯人を特定できない様なトリックを使えば、毛利小五郎が事件を解決してくれる」が動機となって殺人事件が起きているのでは……。そういう事がないとは、我々には断言できない。そこに踏みこんだ作品として「犯人たちの事件簿」が存在したとも考えられます。確かにあそこまでやって名探偵が生きて戻ってくるのは想定しないよね、名探偵は排除するべきルール。
特殊環境そのものが、ミステリ小説のルールに対して疑問を投げかける形になっているというのは、特殊環境ミステリでもあまりないように思えます。探偵行為そのものへの疑問を青岸は作中抱き続ける。そういう作品です。

純粋にミステリとしてはかなりの量のアイデアが盛られた事件を扱っていますし、「このさらっと出てきたアイデア、これだけで小説が書けたやつでは?」みたいなものも多い。青岸探偵事務所の活躍を読みたい読者は少なくないはず。今年中に読んどいてよかったオブザイヤーになるんじゃないかなーと思います。

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