2021/01/10

雪/1019hPa/体調:悪い

午前中はそこそこ調子よかったんですけど、一度停電しちゃいまして、そこであれこれ準備整え……みたいな事をしていたら疲れが出てしまったのか、ガクッと来てしまいました。
生活リズムがそれで乱れたし、強いストレスを感じているし、よくないな。なんとか調子を整えたい。

読んだ。


名門の学園で起きた「アルパカ食殺事件」。被害者のテムと同じ演劇部だったハイイロオオカミのレゴシは、事件を通し様々な他の獣に関わるようになっていく。ウサギのハルとの恋、部長アカシカのルイとの友情、パンダのゴウヒンとの出会い、そして真犯人との決着。次第に肉食と草食の間に立つ様になり、苦しみながらも前進するレゴシは、肉食と草食のハーフであるメロンと出会い、敵対する。その決着までが描かれた最終巻が刊行されました。

全巻読んだよ。面白かったです。2021年にこれが完結したのは、たぶんSF漫画の歴史に残る出来事でないかな。

シリーズの序盤はとくに少女漫画めいたトーンが強い。SF系少女漫画の系譜に位置する作品だと思います。作者の筆と演出の強さ・個性があって、戦闘シーンがやたら濃いと思ったら、板垣恵介の娘さんなんですって。むっちゃ産湯を感じる(そういや刃牙も結局は人間の内面交流の話であると言う部分はありますね)
レゴシとハルの関係も「気が強いロリータファッションでめちゃんこモテる背の小さい先輩女子」に「けっこうルックスはいいしスタイルバツグンなのに、なにを考えているのかわからないオタク少年の後輩男子」の延長線の上にあるのは間違いないんですよね。いかにも少女漫画的なシチュエーションであります。

この世界ではどんな関係にも「どういう種なのか」が関わる。この種と言うのは厄介で、身分の差のような機能もあれば単純に性差の様に機能している部分もあるし、ルーツにまつわる差別の問題もある。もちろん現実の縮図ではあるんですが、これらの要素をややこしくするのは、ほとんどの肉食獣は「裏市で非合法に肉を買って食べている」と言う部分。会社に行けば「昨日の晩ご飯に、どこかの誰かを食べたであろう隣人」と仕事をして……みたいな社会、当然いつかは崩壊するよね。

この話に対して社会システム的な結論は出るかと言うと、出ないまま完結しました。そこにけっこう不満をもっている人、多いみたいなんですけど、でも物語の中心に位置する問題ではないんだよな。そこ。中心に位置するのはあくまで、「レゴシと言う個人が、どういうつもりで他人と関わるのか」と言うところじゃないかな。
だからレゴシがウサギのハルに対する愛と食欲の区別に悩み苦しみ、あげく「単に自分は草食獣が好きな変態なのではないか」「自分は食欲ではなく変態性欲に悩んでいるだけなのではないか」とか言い出すのはかなり物語の必然だったと思うし、煮詰まった末に「恋人になってほしい」をすっ飛ばして「結婚して」になるのもテーマに関して誠実なシーンと言っていいと思う。

マフィアの抗争、レゴシの修行なんかは泥臭くて少年漫画の系譜を感じはするんですけど、ずっと内面の話をしているのでやっぱ「心の内側」に興味が強い人向けの漫画じゃないかな。
あとはもうひとりの主人公はやはりルイだと思うんですよね。

レゴシとルイ。二人とも結局は自分の正義のために「枠を壊してしまう」タイプの異常者で、その二人が互いを思いやりながらめちゃくちゃやるんですよ。「禁忌を犯して相手を食っても/相手に食われてもいい」関係性。他にはない。作者が「人間同士では描けない関係性」の話をしていたんですが、本当に人間同士だと成立しない不具合があるのは結局この二人の立ち位置なんだよなーと思ってます。だからこそ、後半はこの二人の話になっていく。その印象が強すぎて、ハルとの話がちょっと風呂敷畳む時不揃いに見えるのかも。

正直、荒削りでシッチャカメッチャカな作品って部分はあります。でもそこを愛せるタイプの物語なんで、かなり推せる。

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