雨／1004hPa／体調：まあまあ
はい。地獄の幕開けです。
ソニック・ザ・ムービー
子供向け冒険映画、大人になってしまった男と子供のままの動物キャラクターとのロードムービーとしては、よくできていて、小学生くらいには見せてあげたい映画まである。
しかしソニックの映画ではなかったんですよね。これは『ソニック・ザ・ムービー』なのでそこが致命的ですよ。ファンは怒るべきまである。ソニックたちの声優が違うのなんて誤差でしたよ。むしろ「あれはソニックじゃないので声が違うのは当たり前じゃないか」まである。育ての親ロングクロ－何者？！ 原作そんなヤツ出た事ないよね？ ドクター・エッグマンの部下エージェントストーン何者？！ 特技は激ウマのヤギのミルクラテを淹れる事！ そんなヤツ知らないよ！ とかはまあ誤差です。ハリウッド映画化においてソニックのバディとして人間が突然生えるのも構いません。よくある事。このトムはいいやつでしたしね。二人でトラッシュリストを片付ける件はぐっと来ました。孤独を抱えた少年と、夢と現実に惑う青年の交流、とても良かったですよ。
予告編ではどうしようかと思ったソニックのビジュアル修正もいい感じで、とくに靴がよかった。全然ソニックじゃない靴を履いているのも、これは履き替えイベントがある前フリだなと思えて本当にそうあだったし、それではしゃぐソニックはとてもかわいかった。これ予告編段階ではなかったシーンかもしれないなあ（公式サイトでのアクションシーンのSSの中に、ソニックが作中靴を履き替えるシーンの前のシーンでもう赤い靴を履いているものがあったので、まず間違いなくわりとあとになって追加されたシーンだと思います）。
ただソニックはキャラクターデザインの根幹として「クールなキャラクターであること」があったのですが、完全にわがままで常識を知らない子供として再構築されている。これは大きな改変なんですよね。まあありと言えばありかな。ソニックがやたら簡単に怒るのは……う、ううーん！ キャラ崩壊！ まあでもこれはソニックのキャラクターの最も重要な要素である「自由への抑圧を嫌う」を子供として描くことで処理したんだな！ ハリウッド映画はそういう翻案を平気でするからな！ 理屈はわかる！ でも肯定するのは難しいよね。
映像の満足度は高い。フルCGのキャラクターが縦横無尽に駆け回る……でもゲームのほうが駆け回ってない！？ ソニックの定番アクションと言えば壁や天井を走り回る・スピンでの壁破壊などがあるんですが、これらはスピードが他のアクションゲームに比べて段違いだというのを視覚的にわかりやすくした傑作表現でして、小さな体のソニックが他のアクションゲームなら突破できないような地形をただ走るだけで突破できると言う、キャラクターのらしさを体現した部分なんですよね。ところがムービーソニック、お前、一回も壁走ってなくない？！ 障害物破壊も別にしてないよね。エッグマンの攻撃でなんとなく建物は壊れていたけど。ピンボールもしてない！ スピンアタックはちょっとだけやったね。敵を撃破しながらの連続ジャンプもやってないか。やっぱゲームの方がスピード任せでどんな障害も突破していく表現ずっとできてる。もっと縦横無尽に駆け回っていいんだよ。ビルに登るくらい楽勝でしょ。
仮面ライダーカブトみたいなほぼほぼ時間停止みたいな高速状態で余裕たっぷりに行動する演出いらなかったよね。なんだったんですかあれ。いや、わかるんですよ。ソニックがフラッシュのコミック読んでますもんね。アメコミリスペクトでしょ？ ソニックだって時間移動や世界転移を行うキャラクターだからフラッシュに対してリスペクトを払う、わかります。わかるけどソニックの描写としては全くいらなくない？ それよりも普通に走り回ったらもう相手は手出しできない！ みたいな描きかたの方がキャラ伝わらない？ キャラ崩壊はさせてあるからキャラ伝わらない演出のほうがらしいという判断なのかな……。かなり困惑したよ。
つまり、その、なんだ！
映画としては悪くない！ むしろ面白いので子供に見せたいまであるんですけどさー！
ソニック・ザ・ムービーとしては0点に近いんですよ。もはや全然ソニックじゃない。青いハリネズミが超スピードで戦うだけではソニックと言えないと言うのを、まったく理解できていないとしか思えない形での映像への落とし方なんですよ。だから厳しくなってしまう。
ゲーム原作の映画としてソニックのキャラクターを活かすなら、BGMを移植したり地名を持ってきたりするだけじゃたりないでしょ。ゲームで表現されているソニックというキャラクターを映画に落とすのがゲーム原作の映画化でしょう。そこが全くできてないんですよ。ガワだけは寄せてあるけど「悟空はハイスクールの学生」と同じくらいにキャラ設定の変更大きいですからね。
邦キチ！ オレにこの映画の見方を教えてくれ……！ オレはうるさい原作ファンなんだ。だからこの映画を、まっさらな目で見る事はできん！
はじめて操作したソニックがあっという間に猛スピードで走り回り、壁を垂直に登っていった日の事を今でも覚えている……。ソニックの武器はスピードしかなく、そしてスピードだけでどんな困難でも突破していく。そのクールなゲームデザインにあっという間に心を奪われた。その痛快さが映画としてどう表現されているのかは、はっきり言って……楽しみだったんだ。しかしその「ゲームのソニックの魅力」をあえて削ぎ落としたような作品がこれだ！
残念ながらオレには、お前のようにどんな映画でも好きになる「好き」のパワーがない！ だから惑っている、この映画をどんな顔をして人に説明すればいいのか。どうすればこの映画の良さを自分に認めさせる事ができる……！ どう言えば他人だけではなく、自分を納得させられる「面白かった」と言う感想になるんだ、教えてくれ邦キチ！
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