2022/04/23

晴れ/1012hPa/体調:悪い



さて。なにを話せばいいのかと言う作品なのですが。さすがに表紙で完全にバレている要素はいいですよね。

宇宙SFです……と言うのは僕の中ではちょっと違っていて、「宇宙を舞台にずっとサイエンスをしている小説です」が正しいと思う。『火星の人』はもちろんとして『星を継ぐもの』に近いテイストですね。

舞台となるのは謎の宇宙船である『ヘイル・メアリー』。これは「アヴェ・マリア」ですね。
その船の中には、考えうる限り最高とすら言える科学実験のためのラボがある。その装置たちがどんな機械であるのか理解できる科学知識を持つ「僕」は、しかし、目覚めた時にはここがどこなのか、自分が誰なのかもわからない。しかしすぐに気がつく。自分は科学が好きなのだと。そしてこの『ヘイル・メアリー』には、自分の知識にはない、しかし明らかに地球の技術が使われていることに。

そこからはもうずっと「科学」してるんですよ。凄いでしょ。最初から最後までずっと科学する小説なんですよ。自分を何者なのかを突き止めるその仮定から始まり、物語の執着までずっとずっと、科学してる。

で、「なにもかもネタバレになるし、そもそもまったくネタバレさせずに読んでもらいたいのか」なんですよ。それは「ずっと科学をしているから」なんですよ。

「手に入る材料で、もっともそれらしい仮説を組み立て検証、可能ならば実行する」と言う科学のプロセスがこの小説のすべてなんです。それらすべてが楽しく、子供の頃生まれてはじめて虫眼鏡を手に冒険したその日の気持ちがずっと続く。そしてあの興奮を人に話したいと言う衝動、それそのものを物語としたのが、この『プロジェクト・ヘイル・メアリー』なんです。だからもう「キミも読んで、この経験を共有してほしい」としか言えない。

もうひとつだけ語ると、科学技術の目的とは、それは「未来のために今をより良くする事」で。この小説はそれをずっと、意識的、あるいは無意識に僕らに示してくれている。地球の未来を信じたくなる。

読んだ。

吉本浩二『こづかい万歳』4巻


こづかい怪人読者組登場。8話収録なので、かなりボリュームがありますよね。なんか長いと思ったら気のせいじゃないみたい。
全体のテイストとして、みんな家族や友人の中で、謙虚にこづかいを使って生活を送り、人情噺として決着がついているいいエピソードばかりが集まっていて「初心者向けこづかい万歳」だと思いました。表情がキマっている場面が多いけど内容としてはそうではない。一番やばいのは吉本先生本人の臨時こづかいエピソードなので、吉本先生は怖いですね……(吉本先生の世界の認識はたぶん、僕とそうとう違う)
コロナ禍で酒をやめることになって、犬を愛する生活で人間性を取り戻す話、本当に「酒に頼るのはだめだな」みたいになる。その後に過去のこづかい万歳を思い出すと「……やっぱり2巻や3巻のアレは異常者のエピソードなのでは?」となってしまうんですよね。

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