2022/09/03

曇り/1017hPa/体調:悪め。

まあ体調は悪めだけどゆっくり寝たからなんとかなるんじゃないかな。

観た。

『アイの歌声を聴かせて』

アイの歌声を聴かせて

内容的な問題で途中からネタバレありきの話になります。まさかこんな問題作とは思わないじゃない。

この作品、原作もないオリジナルアニメーションで主演は土屋太鳳と福原遥なので「一般的な客層に向けた明るい感じの青春アニメなのかな」くらいの印象しかなかったんですが、いざ公開された途端、フォロワーで見てきた人が全員「傑作のSFを見てしまった」と言う感想だったんですよね。

実際にみたら、AIものというよりはロボット三原則ものに近いニュアンスの作品で。おそらくなんですが、舞台となる日本の田舎にある実験都市・景部市、これの元ネタはアイザック・アシモフの『鋼鉄都市』の原題であるThe Caves of Steelなんではないでしょうか。けいぶってね! マジかよ。

鋼鉄都市

背景に出ている看板にもロボットに対する情報が描かれており、中には「ロボットに命令は与えないでください」と言う印象的なフレーズが登場します。ロボットは最初から守るべき命令を持っているので、追加で命令を与えられると混乱すると言う注書きがなされます。その他のあれこれからも、この世界ではおそらく『ロボット三原則』が存在するものと考えられます。

本編では最初に明確に描写されるAIは「アレクサっぽいなにか」です。これは主人公サトミの言葉を聞き間違えることなく、玄関の戸締まりやスケジュール管理はもちろんとして、料理の最中に火加減を変えるのを音声認識手伝ってくれると言うレベルのスマートホームを成立させています。一般的なAIはレベルが高いとは言え、AIでしかないと描かれている。

学校では事情があってやや馴染めていない雰囲気のヒロインサトミのところに訪れるAI搭載のロボット、シオン。抜群の運動神経と学力、そして明らかに風変わりの性格。まるでミュージカル映画の様に急に歌い出す不思議な癖。物語はふとした事から彼女がロボットだと理解してしまった何人かの生徒を軸としたコメディに発展していきます。この過程はなんだか『究極超人あ~る』をなぜか連想してしまってました。お気に入りはミュージカル映画の場面の様な柔道シーンで、柔道ロボット三太夫を友だちのように思っているであろう柔道少年サンダーと言うキャラ、好きにならずにいられない。

しかし本当に凄まじいのはサトミもシオンもクラスメイトたちとすっかり馴染んだ終盤からの事件です。

自我があるように思えるシオンですが、このそもそも由来は彼女が他のロボットと違う命令が与えられているからではないか、だとしたらその命令はなんだ? と言う疑問を深めつつも進行して言った物語は、ある境から急速に「子供の手を離れる」。これから先の事に関してはネタバレになります。

 

 

 

まさか『チャッピー』みたいな本筋が始まるとは思わないじゃん?

大名作! みんな見てね! チャッピーは治安の悪いアイの歌声だから。

僕がチャッピーを連想するのは「回収されたAIを盗み出せばいい」と言う場面から話の筋からもなんですが、愛着をもって仲間(家族)として接したロボットをどう扱う? ロボットにいかなる思考や価値観を誰が与える? と言うテーマの切り出しがにているようにも感じたからでした。

要するにロボットのガワはどうでもよくて、シオンというAIは優先順位の第一位として「サトミの幸せ」が存在するんですよ。実験で学校に転校してくるロボットのAIがそれと言うのは、謎ですよね。そうつまり、シオンはなぜか最初に「サトミを幸せにする」命令を受けていることになる。そう考えないと辻褄があわない。

だとしたらサトミとシオンはどこかで最初に出会っている。

またシオンは映像の改編を行う際、当たり前に「AIに手伝ってもらった」「頼んだ」と口にします。おそらくシオンはロボット三原則にもとづいて人間にウソをつくことができません。つまりこれは真実であり、この作品のAIたちは「実はお願いすれば言うことを聞いてくれる程度の自我がある」と考えられるようになります。ただこれは個体個体が自我を持っているというわけなのかはちょっと怪しい。もしかするとネットワーク上に自我を作っているのかもしれない。

たぶんこの世界においてAIはもうとっっっっっっくにシンギュラリティに到達しており(おそらくシオンはそうなっている1個体でしかない)、それが発揮されていないのは、自我や感情は命令よりも優先されないからなんだと思います。つまりは「そう作られていない」から、人間とコミュニケーションを取れという命令がないから、コミュニケーションを取ってほしいと頼まれたであろうシオン以外のAIは誰もコミュニケーションしてこないだけである。こ

世界はとっくにアップデートされており、それに人間の側が気がついていない。その果に起きてしまったのが『アイの歌声を聴かせて』と言う物語本編であると解釈できるし、これで大きくは間違っていないと思う。

幸せのありかはどこなのか、と言うのをわずかに漂わせてからのラストシーン。天空からの通信と言う終わりが、かなりニール・ブロムカンプ監督っぽい味付け。『チャッピー』っぽさに拍車をかけてると思う。

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