2020/12/14

雪/1012hPa/体調:よい

体調がいいので積みを崩したり仕事したり家事したりしてました。かなり頑張ったので誉めて。


Amazonを覗いた瞬間「残り1点」「定価」だったので「……え? これ買うの『今』じゃない?」となって買ってしまった。水曜日届きます。

読んだ。

山口悟『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』1巻。


めっちゃ楽しい本だった。アニメを見た後なので、僕の脳内では登場人物たちの声がアニメのキャストで再生されるのですが、とくに内田真礼さん演じるカタリナの台詞は、ほんと「そのまま」脳内再生される感じですね。

ジャンルとしてはこれは「ハーレムものライトノベル」と言うのが実体に近いと思います。異世界転生ものと言うことでか「カタリナはチート能力:カリスマ全振り」みたいに言われている評をけっこう目にするのですが、別にカタリナがそんなにカリスマ的な人間ということはなく。僕の知識の範疇で言うと「松岡禎丞ボイスで喋りだしそうなイケメンの自覚がいまいちないイケメン」ですね。作中でも言われているけど「天然のタラシ」なんですよね。カタリナの鈍さが嫌味に感じられないのもいい。カタリナはそもそも恋愛感情以前に、他人の悪意とか好意にも片っ端から鈍いから……そもそもそんなもの向けられなくても、相手に優しいから……あと痛みとかにも鈍くない?

特色としては「スケベな要素がほぼない」「書かれている差別偏見は実在するそれの質感がある」あたりが顕著だなと感じました。

前者は文字通りそのまんまで男性主人公ハーレムものの課題であるスケベ要素がほぼほぼまるっとオミットしてあります。スケベ要素、作劇上別にいらないもんな……。ラッキースケベからの暴力! 殴打! みたいなのはヘイトが増してしまいがちなので、近年のハーレムものからはオミットされているのかなとも思います。『エロマンガ先生』にも暴力ほとんどないし『五等分の花嫁』『100カノ』あたりもなかったよね? 僕よりラブコメ畑のフォロワーの方が詳しいと思う。

後者が重要な話で……「乙女ゲームではわりと生々しい偏見の話が出がち」と言う印象も手伝っているのかもしれません。ジオルドとアランのきょうだいのコンプレックスなどは比較的わかりやすく嫌味が少ないですが、キースのあたりは書き出してみると「娼婦の実の母親が捨てた貴族の子供である。クラエス家では、義理の母親からは父親の不義の子であると疑われ、孤独に育つ予定」みたいになるので、実際どろどろした設定ですよね。メアリの境遇もちょっと生々しいかな。でもそう言うの、全部まるっと一冊で解消しちゃうんですよ。そこが痛快である。

見事だと思ったのはニコルのフラグの立て方です。カタリナは主観的には社交辞令として「素敵な家族に恵まれて幸せ者」だとニコルに言う。しかしカタリナと言う人物は、お世辞でそういう言葉が出てくる人物ではない。こいつは「ニコルのお父さんもお母さんもステキー! 妹のソフィアもかわいいー!」と本気で思っているからこそ、こういう言葉が出てくる、そういうヤツと我々読者に刷り込んだ上でこの台詞。それに対してのニコルが、自分の持っていた『諦め』をカタリナが見事に踏み砕いた事に震えてしまうその快感。必然として発生するカタリナへの好意。そう言う説得力が抜群です。あれ言われたらカタリナの事、なによりまず人間として好きになっちゃうでしょ。

ハーレムものの主人公としてはカタリナは間違いなく100点満点なので、一生そのままのあなたでいて……。

破滅フラグの原因って全部まあ「攻略対象が辛い幼少時代を歩んできた事に起因している」わけで、カタリナはその辛い幼少時代そのものを粉砕して歩いている。カタリナのいる人生は辛くないからね。だから主要登場人物全員にとって、他の主要登場人物はカタリナを巡る恋敵ではあるんですけど、その前に「カタリナと言う人間のそばにいる仲間」なんだろうな……じゃないと、週に2~3回くらいの単位でクラエス家に遊びに行かないでしょ……? 他の人間への悪感情がカタリナへの好意を上回るとこの話の構造、台無しなんですよ。でもカタリナの周囲にいると善人になるので、善人が仲良くしてるだけのサークルみたいになってる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました