2023/05/06

雨/1007hPa/体調:そこそこ

普通に動いても体幹の良さが伝わる船上の水樹奈々笑ってしまった。4kgの魚が2匹タモに入っても姿勢が崩れていないの、冷静に考えると相当ですからね。

読んだ。

『名探偵と海の悪魔』

僕が称賛するまでもなく、小島秀夫も阿津川辰巳も大絶賛の本作ですが、本当に面白かった。

 時は17世紀、 大海原を進む帆船で起こる怪事件。
 囚われの名探偵に代わり、屈強な助手と貴婦人が謎を追う。
 すべては悪魔の呪いか、あるいは――?

 ――この船は呪われている、乗客は破滅を迎えるだろう。
 バタヴィアからオランダへ向かう帆船ザーンダム号に乗船しようとしていた名探偵サミー・ピップスと助手のアレントら乗客たちに、血染めの包帯で顔を覆った男がそう宣言した。その直後、男は炎に包まれて死を遂げる。名探偵として名を轟かすピップスだが、いまの彼は罪人として護送される途上にあり、この怪事件を前にしてもなすすべがなかった。

 オランダへと帰国するバタヴィア総督一家らを乗せ、ザーンダム号が出航せんとしたとき、新たな怪事が発生した――風を受けてひるがえった帆に、悪魔〈トム翁〉の印が黒々と浮かび上がったのだ! やがて死んだはずの包帯男が船内に跳梁し、存在しないはずの船の灯りが夜の海に出現、厳重に保管されていた極秘の積荷が忽然と消失する。すべては悪魔の仕業なのだろうか?

 わきおこる謎また謎。だが名探偵は牢にいる。元兵士の助手アレントは、頭脳明晰な総督夫人サラとともに捜査を開始するも、鍵のかかった密室で殺人が!

https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163915074

『奇想』を強く感じるミステリでした。ストーリーの説明が大変なので外部の力を借りる。17世紀の航海中の船と言う巨大な密室で蔓延する悪魔崇拝、囚われの名探偵、知的でしかし熊のようにタフな助手、マジに盛りだくさんなんで説明しきれないんですよ。もちろん殺人事件も起きます。

帆船ザーンダム号は本質的にはクローズドサークルであり、その中で蔓延するのが悪魔崇拝と言う一生かかっても思いつかないシチュエーション(それでも乗員は100名以上いるんですが)での数多くの事件。「マジに犯人は悪魔かもしれない」を含むものの、犯人となりうる人物はそれほど多くない……なので本格として成立するラインをちゃんとついてる。

そしてその状況で「名探偵は囚われの身」の状態が続いているんですよ。冒頭で民衆から石を投げられている名探偵ピップス……。その彼に信仰と呼んで差し支えない敬意を持つ兵士にして助手(なんとちゃんとピップスが主役として活躍する事件のレポートを書いていると言う、超正統派探偵助手!)アレントがこの物語の主役となります。ピップスと揃えて雀と熊と称される熊の方でありながら、一貫して知性的理性的に17世紀を冒険するアレント、本当に魅力的なんですよ。この小説を読んでアレントを好きにならない人がいるとはちょっと思えない。彼の根幹をなす、深い愛こそがこの物語の背骨だと僕は感じた。愛の煮こごりのような男、アレント……。

彼を始めとする登場人物たちの魅力が理解できてくる頃から次々と謎と事件が盛られていくので、完全に心情が「彼らから目を離したくないな……」になってくるんですよね。そうなると読むしかない。幸い分厚いので簡単には読み終わらないけど、読み終わるのがもったいない気持ちになる……。でも読み終えないと彼らの運命が心配だし……みたいになる。こういう気持ちはしばらくなかった。良い小説なので読んで欲しい……。

コメント

タイトルとURLをコピーしました