2022/07/26

晴れ/1011hPa/体調:ちょっと悪い

まだ使おうとしている人が一定数いることに気がついてしまってビビる。

読んだ、観た。

『リコリス・リコイル』4話。

小島監督がニュースになったので、完全に「注目の作品」に分類されてしまった。アバンの「もう違うでしょ?」が無茶苦茶良かったし、つかみとしてはかなり良かったのでは。VRシューティングゲームなら千束よりも他の子の方が強いの、あれは視線や殺意を読めないからなんだろうな……。まさかのパンツ回って噂聞いててなにをやるんだと思ったら人間性の強調のための着せ替え回なのね。と思っていたら紛うことなきパンツ回だった。個人的には快適だからで男物のパンツ履いてても全然いいと思う。

たきながテンプレートなクール系よりも、内面がけっこういたずらっぽいキュートな人格に寄せてあって、その上で「普通ならあるはずの人間性が抜け落ちてる」の作りがキャラ造形がうまいですね。テロリストとリコリスの対峙シーンも「テロリストの方がずっと人間っぽい挙動をする」のがわかりやすい表現でいい。

宮内庁の料理長が作った料理食ってんの?! あと君たち明らかに運動量がやばいのでこのくらいの甘いもの食べても全然平気だと思う。なんなら料理長の料理もかなりカロリー高めタンパク質マシマシなのではないか。

ところで男物のパンツのシワまで作画綺麗だったのに、キーボードだけこだわりないのやっぱり差別かな。

mRNAワクチンの衝撃

COVID19ワクチン対策チーム結成から、人間への初投与までわずか88日。有効率95.2%。人類史上最も効果が高く、もっとも多くの人間が接種した薬剤。ビオンテック製、日本ではファイザーのワクチンと呼ばれているそれの開発の経緯について書かれたノンフィクションです。

前提となる知識として「RNA、とくにmRNAとはなにか?」を少しばかり説明します。みなさんご存知DNA、あれの二重螺旋構造を見て「なんで二重なんだ?」と思ったことはありますか? あれは片方は「細胞分裂する時になど使う提出用データ(アンチセンス鎖)」でもう片方が「この細胞に残るバックアップデータ(センス鎖)」です。

で、アンチセンス鎖をまるっと読み込み、DNAに書かれた情報を伝える仕事をするもの、「細胞作るところ、いわば体内の印刷所に送る入稿データ」がmRNAになります。メッセンジャーの仕事をするRNAでメッセンジャーRNA略してmRNAです、いわば細胞の入稿データです。

今までのワクチンはすべてがアナログ。アナログなんで、一般的な不活性化ワクチンでは鶏卵、それもよりにもよって有精卵を使って「弱毒化したウイルスを増やす」と言う工程があります。もしなんらかの理由で有精卵を生むべき鶏が壊滅したらダメです。アナログ入稿ゆえのリスクが他にもけっこうある。

この本の主役、ビオンテック社は世界初の実用化されたmRNAワクチンを開発していたドイツの会社です。その目的はガン治療で「mRNAワクチンならば、個人個人のガンにあわせたワクチンを作り、人体の免疫を使ってガンを取り除く事ができるのではないか」と言うのをやっている企業でした。データであるmRNAなら(もちろん特定のmRNAを作るのは簡単な事ではないのですが)そういう事ができる。

つまりは感染症のスペシャリストではなかったわけですが、2020年1月24日と言う序盤、まだパンデミックとは言われていなかった頃に「これはやばいのでは?」と突然気がついたのがCEOであるウール・シャヒン。会社経営のパートナーであり配偶者でもあるエズレムとこの病気のワクチンを開発しようと誓いあったのが25日。そして26日の夜には8つの異なるワクチン候補を設計。そして翌日にはプロジェクト・ライトスピード(光速)を発動。このスピード感でワクチンの開発が進み始めます。データ入稿なので「今まで作ってきたものと同じフォーマットを使える算段」があってこその計画です。

だいたい日本では「ファイザー社のワクチン」と呼ばれているものがこのプロジェクトで作られたもので、ビオンテックが開発したものを、提携先のファイザーが全世界に送り出しています。

この時代、mRNAワクチンを作るために必要な技術は奇跡的に揃っていました。揃っていてもわずか88日で形になり、治験が終わって生産されるまで1年かからなかったと言う速度は普通はでません。そのため大変な思いをして「どうにかして1日でも早くできないか」を検討された地獄の会議が繰り広げられます。しかし「科学が第一。スピードはその次」です、「効果が確認されているワクチン」でなければ意味はありません。もちろん政治的な都合によって治験が短縮されるなどもあってはならない。そのスタンスこそが科学であります。科学は必ず病気に打ち勝てるのだから、なによりも科学を優先するべきである。

ここだけ読んでも「mRNAワクチンを作るための多種多様な苦労」がうかがえると思います。

イノベーションはただ、一度に起きるわけではなかった。一つのブレイクスルーはなく、いくつもの要素が組み合わさった複雑なプロセスの上に存在したのがmRNAワクチンだった。そこにいたるいくつものストーリーが語られたのがこの本なのです。

というわけなのでお勧めだよ。

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