2022/09/26

晴れ/1018hPa/体調:まあまあ

なんか心がおれて仕事の昼休みにぬいぐるみを抱えて自室に横たわる異常成人男性になってました。知らないのかぬいぐるみには疲労を吸い取る力があるんだぞ……。

観た。

ExtremeHearts

神回……。

激しい感情表現をせずに、11話、ずっとすべてを受け止めて、痛みに耐えて駆け抜けた葉山陽和の涙が、ついにステージ上で溢れる。むちゃくちゃ良かった……。歌声が震えて、音楽は止まらないままで、でもみんなの視線が集まるところで少し泣いてしまった。みんながパフォーマンスを止めないのも、すごくいい。

このシーンの楽曲『全力Challenger』のまっすぐな歌詞が眩しくて、その歌を作中作った人間が「なにを思ってこれを書いたのか」が染み込んでくるのすごく良かったよ。

ダンスシーンも身長が近いメンバーでステップをあわせたり、ちゃんと動きが伺えるのうまい作り。めちゃくちゃな作画リソースがなくても表現できると言うの、深くにも最近忘れがちだった。

RISEと言うユニット名は「登るしかないから、そういうつもりで!」つけられたものだけど、それはついに物語の最後、楽曲『SUNRISE』により「太陽」としての名前にすっかり変わっていたと言う結末、美しい。

陽和の怪我が良くなるまでの間は、出演した番組の人とかもちゃんと杖をつかせて椅子に座らせている描写があるの、「社会性」がこれだけで伺えるいい描写だった。こういう細部を描くとそのうち神が宿る。全部やる必要はない。

僕はこの作品「なにかをやりたい気持ちを否定しない」「だからこそ、本当にやりたい事は、ちゃんと声にだして始めよう」と言う『動機』の物語だと思うんですよね。覚悟が完了したやつが勝ち上がれる、新時代のスポ根アニメ。

そして全体として描かれていることに『良心』が明確である作品というだけでかなり気持ちよかったのは強調したいんですよね。

もちろん楽曲の歌詞の真っ直ぐさ、正面から歌われる美しい世界、私たちは世界をより良くできると言うのを体現したアイドル、RISEと言うキャラクターたちの在り方が象徴している。これはアイドルアニメでもあるので当然。

ただ本筋以外、例えば「テクノロジーは人を助けるものだから、身体強化やロボットの運用はスポーツだけに限られた特権的なものではない」とかも印象深くやっている。当たり前に出てくる全自動電子車椅子でバリアフリー剣術道場を移動するシーンとか、これは全然ギャグではなく「この世界観ならこれが当然なのでこうした」なんですよ。トンチキなものを作ろうとして生まれた描写とかでは全然ない。作り手が真面目すぎる。2048年、新聞配達する女子高生が3階の高さから飛び降りても大丈夫な世界では、そのくらいのできなくてはいけない。それだけなんだと思う。この要素で雑なSF描写なのに、SFとしてなにを描きたいのかはぎょっとするくらい明確。テクノロジーは幸福を作るために存在する。

だからテクノロジーで強化された肉体で戦うExtremeHeartsのアイドルは、人を幸福にするのが当たり前と言う文脈がちゃんとある……こう、真面目なんだよな……。

この「異常なくらいに真面目なところ」がこの作品は全編に満ちてる。1話を見返すと音楽もCD販売している様子はなくて、販売実績はユーザー数でカウントしてるんですよ。なので残酷無比な36ユーザー。これ、たぶん音楽配信サービスも真面目に検討して「ヒット曲ほど再生されやすい音楽配信サービスが流通した未来では、マイナーなシンガーはこの程度の実績しか作れない」みたいなこと真面目に考えちゃった数字だったんだと思う。この時代なのに紙の書面を送ってくる芸能事務所は正直なんなのかよくわかんない。これは深く考えずにベテランの監督が切っちゃったコンテかもしれん。

「好きでサッカーをやっているのに挫折した」の話をするシーンも、ちょっと見返したらあんまりにも深刻な口ぶりでやっぱびっくりするけど「真面目に向き合うとそうなる」だけって今なら納得してしまう……。

途中からYou Tube公開のショートアニメ(いわゆるテキストアドベンチャー風の画面での、見なくても全然大丈夫な内容補完)や公式サイトで掲載されているブログも読んでいたんですよ。

このブログが「作中初期の更新はまだまともなブログを作る能力がないため、最低限のコストしかかかっていない、売れないアイドルの限界ブログ」と言うデザインで公開され、それがだんだんと物語の進行に従って「きちんとしたブログ、更新も一人ではなく多人数で行う、ファンを意識したコンテンツとして機能しているブログ」に変わっていくと言う手の込んだ表現がなされてたんですよね。「世界観に視聴者も乗って欲しい」と言う作り手の意思表明ですよね。世界観を踏まえて、その先にあるアイドルRISEを描く番組だったので、このやり方すごく正しいと思う。

マジに良いアニメだった。正直僕はいまさらこのスタジオの作品に、こんな心動かされると思ってなかったのに、泣いたもの。ありがとうExtremeHearts。

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