2022/10/23

曇り/1015hPa/体調:ドンブラに支配されている

衝撃のドンブラザーズ。

さて、いろんな議論が起こってますが、この話はラストの笑顔からくる印象よりはずっと雉野さんはまともです。そもそも彼がしたことは「仲間ではない指名手配犯」である犬塚さんが「自分の妻を誘拐した」のを通報したわけですし。そう、キジブラザーはイヌブラザーの正体を知らないので、仲間を売り渡したわけではないのです(なんならたぶん来週には普通に一緒に戦うぞあいつら)。

今まで雉野と犬塚は明らかに友人関係として描かれています。犬塚は困難にあたって、友人であると言う理由だけで雉野に助力を求めた事もありますし、雉野もまた友人である犬塚を心配して助けに行ったこともあります。雉野はやはりそもそもが善良な人間であり、それゆえに周囲には好かれる。タロウも雉野のそうしたところをけっこう評価していると感じてます。

雉野が完全に怖い狂っているみたいな論がTwitterでは氾濫しているのですが、実は今回の件はそうとも言い切れません。犬塚も雉野に嘘をついて夏美(と思われる人物であるみほ)と接触し、説明や理解を求めることもせずに彼の妻をその場で奪い去っていったのです。犬塚は雉野を信頼している。対話によって真相に近づく方法を模索することはできたはずなのに。雉野は友人と妻を一度に失ったのですから、「闇堕ちしても仕方がない」と言われそうなところです。

犬塚が雉野に告げた台詞「お前は悪くない」も完全に事実でしかない。言葉としてはこれは美しい言葉だと思う。犬塚翼の人格がこめられてる。でも「友人が妻と抱き合って連れ去った、事情はなにも説明されていない」被害者でしかないのは事実でしかない。雉野はなにも知らない。なのにあの笑顔一つで雉野は「そう、自分は悪くない。被害者だから」と言う免罪符を手に友人を陥れた構図になってしまう。あの笑顔が「そもそも邪悪な男だった」のだと猛烈に訴えかけてしまう。

でも本当にそうか?

雉野がみほに抱いていた感情を「トロフィー」と称しているツイートもあって、僕はそこにもモニョモニョする。確かに雉野にとってみほは自慢の、自分には不相応な最高の奥さん、そんな彼女がいて自分は最高の幸せものだといつも繰り返している。でもはたして、雉野の様な弱い人物が、愛する事ができるパートナーを持つことで自己肯定感を得ているのは悪いことなんでしょうか。それは自然な気持ちのありかたでしかないのでは。ドンブラザーズは子供向け番組なのですから、キャラの特徴を繰り返し繰り返し強調するのは当然の演出でもある。

ところが雉野は「みほちゃんは無事なのか」ではなく「みほちゃんを返して」と犬塚に告げ……いや、確かに悪い。底が見える発言ではある。でもこれが「邪悪な発言」とされるようなものかと言われると、やっぱりそうではないと思う……なぜなら彼のもとからみほちゃんは歩き去っていったんだ、それでもみほちゃんを第一に考えろって? みほちゃんも犬塚さんも雉野さんの事を第一に考えてくれなかったのに? それなのに雉野さんには誰よりも優しくあれというのなら、それは傲慢だと思う。

なによりどう考えても雉野は「みほちゃんに愛される自分」を手に入れた事で、自己肯定感を入手したキャラクターとして描かれています。雉野と言う人間の持つ、誰にもでも優しいからこそ失敗しがちなところ、無条件な善意を人に向けることができるところ、そこを認めてくれるみほちゃんを失ったんですよ。雉野が雉野であり続けられる方がおかしいじゃないですか。「家族に肯定してもらうことで、より優れた自分を持つこと出来ていた」のは素晴らしいことで、それを雉野の弱さと言うのは残酷すぎる。

雉野は、自分が相手に向けていた愛と友情を、失ってしまったのではないか? 犬塚とみほちゃんがなにも言わずに自分の元から去っていったのだから、雉野の愛もそのままではいられなくてもおかしくないだろう?

なぜ雉野を、なぜ犬塚を、不思議な縁で結ばれたただの友達としておいてくれないのだ井上敏樹。

観た。

『インサイド・ヘッド』

インサイド・ヘッド

吹替版がリンク先になっているのは、珍しく普通に吹き替えで見たから。

TLで聞いた評判は「続編が望まれる名作ピクサーアニメ」くらいでどんな話なのか全然知らないで見ました。キャッチなみためのわりに示唆に富んだ名作映画でした。

主人公はライリーという田舎から都会に引っ越した少女と、彼女の中にある感情たち。人間の脳の中に存在する感情をキャラクター化しており「ヨロコビ」「カナシミ」「ムカムカ」「ビビリ」「イカリ」が登場します。また性格・夢・思い出・空想をシステムとして表現し、ライリー引っ越しによってがもともとのライリーではいられなくなるプロセスを描いている映画なんですけど「そもそも人間にはなぜ色んな感情が住んでいるのか」そのものを子供向け映画にしてる事がすごいですよね。夢の時間に記憶を整理することや、思い出が人間の前進にどんな力をもたらすのかも絵で表現されている。

人間は当たり前だけど、ヨロコビだけでは生きていけない。ハッピーな気持ちそれ自体は大切だけど、ときには人の悲しみによりそったり自分の怒りを誰かに伝える事で、自分という人間を形成する。作中、とくに印象深いのは「カナシミ」の活躍で、彼女が「悲しいでしょ」と言ってくれることがどれだけ大切なのかは見た人の心に残ると思う。おすすめ。僕も続編が見たい。

『SPY×FAMILY』16話

メシマズ回と情報屋さんが好きな人できてアドバイスを求める回。どちらもテンプレのコメディなんですけど、キャラの背景をのぞかせることで受け入れらしいジョークにしているのがいいバランスでした。

特徴的なのはヨルさんの料理の話で、ヨルさんが料理ができないのは「親の不在に由来する」あたりを強調してある。アニメメシマズなので食った人が倒れたりはしてしまうのだけど、この作品だと「ロイドはそれをまずいと怒り出したりしない」し「料理の仕事をロイドがすべてこなす」事もないんですよね。ヨルさんの個性は受け入れ、その上で彼女が料理を頑張りたいなら受け入れる姿勢を見せてくれる。料理が下手という要素は、それに対する姿勢でロイドがいかなる男性なのかを表現するツールとしての側面が強い(おそらく主体はそっちなんだろうと思う)。

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