2022/12/20

雪/1022hPa/体調:昨日休んだらよくなった

ニュースを見ていたら「木製のクレジットカード! 使うたびに植林されます!」みたいなのが出てきてびっくり。と言うのも、僕が子供の頃は木製品は環境を破壊するものとされ、プラスチック製のものを携帯しようと言う話が美談となっていたんですが、現代においては「石油資源を消費して二酸化炭素排出量を上げるほうが環境負荷が大きい」って考え方なんですよね。

このあたりもあって一定の世代から上は紙ストローにその手の違和感があると言うの、ありな気がする。環境保護の流れを胡散臭く感じやすいのも、昔は実際に胡散臭くて過激なテロリストがネタにしていたりしてた時の悪感情を引きずっているのがだいぶあると思う。

読んだ、観た。

乙一『一ノ瀬ユウナが浮いている』

大地の幼馴染、両片思いの相手だった一ノ瀬ユウナは、彼女好きだった線香花火を灯す時だけ、幽霊となって彼の前に姿を表すようになる。告白できないまま死んでしまったユウナと再び会うため、大地はこっそり線香花火を灯して暮らすようになる――彼女の好きだった週間少年ジャンプを、毎週欠かさずに用意して。

「小学校6年生の夏の日、幼馴染の同級生少女と二人きりで、HUNTER×HUNTERに出てくる水見式をこっそりと試した」「その結果、二人とも念能力の素質はないとわかり、彼女は目を赤くした」と言う一生の思い出を序盤に叩きつけられて、まるでそれを自分で体験したかのような幻覚が次々と浮かびます。本書のヒロイン、一ノ瀬ユウナがジャンプ巻末の作者コメントまで全部読んでいると言う記述から、あなたの中のジャンプ漫画への思いは次々と彼女との記憶に結びつくでしょう。しかし本書のテーマは花火と幽霊なので、彼女は死んで幽霊になります!!!!! バカ!!!!!!! 作者がは乙一先生だからね、当然死ぬし当然幽霊になるし、一生の傷になる。

表紙の女の子がそんななるんですよ。みんな耐えられます? 僕は無理だった。17歳でユウナが亡くなるところまで読んだところで、僕はなぜか涙が滲んできて「なんでもう泣いてるんだ……?!」と自分で困惑して一度本を閉じた。夕食を家族と食べなくてはならなかったので……。

乙一さんは演出の天才なので、この水見式をやった思い出はその後を暗示しているシーンである(つまり主人公である大地は、念能力なんてないただの少年でしかない!)と同時に、その後も「妙に記憶に焼きついている絵」としてちまちま触れられるのです。例えば、幽霊として現れる一ノ瀬ユウナが浮いている姿がそうで、そこには「あの日の水見式で揺れていた葉」が重ねられる。

本書のもう一つのキーとされる線香花火は、もちろん儚さと美の象徴で、これも演出として意図的に色々と散りばめられているんですが、おそらく小説としての構造そのものがかなり『線香花火』をモチーフにしていると思う。蕾、牡丹、松葉、柳、散り菊の5つの状態はおそらく5章からなる各章に対応してる。僕は乙一の事を完全に信頼しているので言うんですけど、読後感もコントロールされているはずで、それは線香花火の終わりと重なるように演出したものだと考えていいと思う。

「同じ様な筋書き」は誰にでも思いつけると思うんですけど、このパーツを使って「過度」にならないように演出でコントロールする配分の能力が、完全にオンリーワン、乙一なんですよね。何回も言うんですけど、他の名義で小説を書いても読者がすぐに特定できてしまうの仕方がないですよ。書き手の暴走みたいな行がまったくない。理想の小説家の一人だと思う。

『TIGER&BUNNY2』19~24話

タイバニの名物な、強敵との対決で町全体から応援されるようになっていくヒーローたちの姿にスポットをあてた終盤戦。痺れ薬も効かないようなやばい人を普通に刑務所にしまうな。と思ってしまったんですが、人権の問題なので判断が難しい。危険な能力を持つネクストを厳重に管理すると言うのは、ネクストの人権を侵害しているわけだし、それを実行したらそれこそルナティックの様に私刑を行うのと本質的が同じになってしまう。この辺のラインの線引はだいぶ難しいですね。

またヒロアカとの比較になるんですが、ヒロアカと違ってタイバニ世界は「ネクストではない方が大多数である社会」なので、当然として差別や偏見のあり方も「危険な能力への偏見」ではなく「能力の存在そのもの」へ向けられる傾向があるんですよね。ヒーローの活躍で「ネクスト全体への好意」が生まれがちでもある。

この辺はタイバニ2の作り手もかなり意識してるだろうというのは感じますね。なのでここで「家族を殺害されたルナティックはどうするべきなのか」「超人社会の指導者である人物の危機にあたって人類はどうするべきなのか」がねじこまれている(その上でレジェンドとの対比などもやる)。タイバニが好きな人が求めそうな要素をかなりちゃんと抑えているし、好感度が高い後半クールになっている。

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