2020/09/22

曇り/1018hPa/体調:なんかだるくてまるっと一日寝ていた

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝』を見返していたのですが、今見返すとこれはかなり、「教育」の物語なんですよね。

僕は文学史に詳しいわけではないので、掘り下げての話は出来ないのですが……。そもそも『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』そのものが『あしながおじさん』をオリジンとした物語と言う要素はあるなしで言えば、あると思うんですよね。あれは資産家に見いだされた少女が書いた手紙がその物語のほとんどと言う形式。大陸を移動する大鉄道、海沿いの色鮮やかな街の描写には英米文学のイメージを持つ人も多いんではないでしょうか。

とくに『外伝』はモチーフとしてアメリカ・イギリス・ドイツでの文学の影響を全面に押して出してきたと考えていいんじゃないかしら。寄宿学校での『小公女』『あしながおじさん』『トム・ブラウンの学校生活』『車輪の下』『飛ぶ教室』なんかの影響がなくこの物語が構築されたと考えるのは、さすがに無理と思います。ヴァイオレット・エヴァーガーデン世界は英語名みたいですし、とくに影響が強いのは米文学と言うイメージがあるかな。『外伝』でちらっと出てくるクマ、アメリカっぽいですよね。

『外伝』においてヴァイオレットがイザベラに受ける指摘である「今、とても恵まれている」のは本人の素質と周囲の人間のおかげであるわけですが、それを支えているのは、彼女に送られた様々な「教育」と言うのはだいたいの人に同意してもらえるんじゃないでしょうか。その根幹に据えられているのが「読み書き」である。彼女の基礎教養、軍という過去、数々の支援者と言う構図は、まるで男性の様でもある。そしてヴァイオレットは寄宿舎の中では、そのまま男性としての意味をもたせられている。

『外伝』の前半のイザベラは「教養を必要としている女性」なのですが、彼女に与えられるものは「社交界の女性として必要なそれ」に限られてしまう。デビュタント(舞踏会)と言う明確なゴールに必要なものだけ。そしてイザベラは自分の状況を変える事が出来ない。

一方でテイラーは文字を読むと言う事を身につける事で、郵便配達員と言う、まるで男性のような仕事を手にします。彼女の教育をするのが、「女性の様なファッションをする男性であるベネディクト」と言うのも示唆的だと感じられます。そう言えばヴァイオレットもアニメで最初は郵便配達員としての仕事を与えられるわけで、これは「文字さえ読めれば誰にでも出来る仕事」みたいな扱いなのかな。歴史を振り返ると、そもそもは郵便強盗が多すぎて、拳銃を支給されるようなタフな仕事であった。と言う感じみたいなんですけどね。

ここでの描写を考えるとこの世界で文字が読めないのは、そこそこ珍しい事なのかもと言う感じではあります。都市と田舎での格差も大きそうです。それを踏まえると『劇場版』での島での仕事と言うのは、社会的には意義が大きいのかもしれませんね。ヴァイオレットがテイラーに文字を教える、それを「勉強」と表現させるのは、とても直接的なシーンかな。

(そして余談なのですが、ホッジンズ社長は年齢が若い少女を慣習的に「〇〇ちゃん」と呼ぶ性質がある様子で、彼がヴァイオレットと知り合ったのが、ヴァイオレットが10歳の時である。と言う描写を踏まえると、社長のあれはセクハラと言うよりはパワハラ的な要素かもしれないですね。社会人なのだからちゃんとしろ、お前の会社女性多いだろうと言う感じではあります)

教育というのは、人生の選択肢を相手に与えると言う行為ですから、女性が社会進出する話でもあるヴァイオレット・エヴァーガーデン世界では、それなりに密に描きこまれている気がすると言う話でした。掘り下げや描写が丁寧な作品なので、こういうところを気にしてみると見えてくる要素があるかもねみたいな垂れ流しです。

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