2020/12/11

小雨/1014hPa/体調:そこそこを維持

お勧めする本が沢山あったので、集英社セールと文春セールをピックアップしてみる。とか書きました。
どうもAmazonも宣伝をしっかりやらないし、日本の小説市場はAmazonにもなめられている気がしますね。ヘイト本だけピックアップされている事まであるしな……そういうのがイヤで、物を売る仕事が出来ない、つーか嫌だからと言うよりもそれで体調を崩したりするので物理的に無理……なんでまあ、綺麗なところだけ紹介する程度は、させてね!

読んだ、観た。

高田大輔『まほり』


久しぶりに大作ミステリを読んだ気がする。しかも結局は中盤からはほぼ一気に読み切ってしまった。というのがわりと前のことで具合悪くて感想書いてなかったのを思い出し、終盤をFireタブレット使って読み返したら改めて面白かったので感想です。やっぱり体調が悪い時に読むと解像度落ちるんだな……。

田舎に引っ越した少年・淳が謎の少女を見かける。現代において和装であり、足を引きずって歩く。その行動には年相応の理性というものも感じられないが、とても美しい少女。少女が住まう集落に関する醜聞を耳にする淳。一方、民俗学を学ぶ大学生・勝山裕は至るところに二重丸を貼りつけると言う、『蛇の目紋』に関する都市伝説を耳にする。それは裕の故郷にほど近い(そして淳の住んでいる)周辺の出来事であり、興味を惹かれた彼は調査を開始する。裕の中学時代の同級生・香織をくわえたその調査は、やがて郷里の郷土資料の中に埋もれた暗闇へと続いていく。

そもそもは2020年元旦くらいに僕が「海人さん! 少女が監禁されている民俗学ミステリがあるよ!」と言う死ぬほど人聞きが悪いお勧めをされたので買っておいた本でした。元旦くらいにこんな事言われて2000円する本をお勧めされるの、人としてどうなんだとは思うのですが、実際問題「おそらくは巫女として、宗教的な理由で監禁されている少女」と言う物語はかなりストライクです。中学生くらいに『ゲド戦記』の2巻に被弾して以来、心の中に存在するものですね。

さて要するに「少女が監禁されている。監禁している村は謎がある。その謎を、史料などを使って読み解いてゆく」と言うのが本筋です。中には実在する史料なんかもあって、なんなら実物の写真も収録されていたりします。アプローチのスタイルも堅実で「仮説は批判に堪える形で提示して」と作中散々言われております。この姿勢一つでかなりアカデミックな手法で書かれた作品であることが伺えるんじゃないかなと(これは数学や物理学でも重要で話で、だからこそ実験は繰り返されるものなんですが、その話は長くなるので置いておきます)。

このアプローチでどのくらいミステリになるか? この作品の『解決編』はびっくりするくらい「ミステリ小説らしい読み解き方」が描かれています。読み終わってみれば「確かに民俗学ミステリだな」と納得する内容です。普通のミステリとの違いは結論の出し方、事件性などよりは、「推理の過程をとことん学術的に、つぶさに描いていく」ところにあるかもしれません。探偵の推理はよく飛躍を伴いますが、飛躍を否定するような地道な過程こそが面白いと言うのが、本作のもっとも大きな個性であると感じられました。

登場人物のゆたかな心情描写も魅力としてはかなりのウェイトをしめていますね。とくに淳の、朴訥なまでの「覚悟」が胸を打ちます。打算を越えたところにある、少女を救うべき理由を求めない描写に、強く惹きつけられました。小説に人間を描くことの素晴らしさがあります。良い読書体験でしたね。

『戦翼のシグルド・リーヴァ』9話。


話が面白くなってきて、アニメとしてのテンポの悪さが気になりはするのですが、かなり楽しく見ています。北欧神話を解釈すると言うくだりが面白いアプローチなので、これをもっと詳しく楽しく描いてくれればそこをもっと推せたのになー。明確に「人は邪悪なものではない」と言う意思が滲んでくる話になっていますね。この作品、主人公であるワルキューレたちは人類の守護者であり、そこが気高いのはある意味において当たり前なんですよね。むしろそのワルキューレたちよりも、名もなき人々の言葉や行動方針が印象的に描かれている。今回モブが「完全に正しい」事を言うのがボトルネックとなっているんですよ。こういうのは珍しい。モブが全然くじけない。ここに来て「陽性の物語」であることがくっきり活きてきたことに対する好感が強いですね。

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