2021/05/25

曇り/1003hPa/体調:落ち着かない

ちょっと大きな事があって混乱してるので、日常の事はお休みで。心の安全を第一に。

読んだ。

斜線堂有紀『ゴールデンタイムの消費期限』

はい! SSD先生の『ゴールデンタイムの消費期限』とてもおもしろかったです。
「かつて天才小説家だった少年」綴喜を招いて行われる『レミントン・プロジェクト』。それは様々なジャンルの「かつて天才だった少年・少女」を集め、ある人工知能とのセッションを行わせ「天才たちに再教育を施す」と言う極秘プロジェクトだった。

人工知能とのセッション、とくに呼ばれた天才の中に「すでにソフトウェアは基本的に人間よりも優れているジャンル・将棋」の棋士がいると言う段階で察せられると思うのですが「人工知能と天才たちの相互フィードバック」とかそんな感じのプロジェクトを扱った話なんですよね。斜線堂先生ちゃんと資料を読んで書かれる方なので、機械学習に関する描写はかなりしっかりしています。

とは言え「芸術分野に関してソフトがどうした結論を出すのか」はわりと難しい問題です。作中にもありますが、現状言語に関してはまだまだ機械は人間に追いつけてはいません(最もそれらしいものを作るのはかなり進歩しているので、将来的には小説も機械が書くでしょうね)。

また招かれいる一人が料理人というのも個人的にはかなり面白かったですね。料理は化学に基づく反応が多く定量的なレシピは作りやすい一方、気候だとか人間の体調だとかの外的な要素も多く、他に比べて「最適化するには人間が必要そう」なジャンルなんですよね。やはり現状ではテキストの執筆や絵画も「最適化するのはまだ人間のほうが良い」であろうジャンルです。料理みたいに成分的な話がよりはっきりしているのに最適化できないジャンルが混じっているのが、作品の総合的な納得力をあげていた印象があります。

そしてこれはミステリ作家の本なので、かつて天才だった少年・少女が五人、なにも起きないはずはなく……。全体としてはほろ苦い青春(とは言え、かつてけっこうかけた小説の書き手が何年もアウトプットできない精神状態にある、これは書きたいもののあるなしとは関係なく、相当にきつい状態です。全員がそんな感じの人間と言うのはとても「ほろ苦い」ではすまない精神状態のはず)と言う感じにうまく仕立ててあります。個人的には読み味としてはSF風味だけど米澤穂信さんあたりに近いと感じたかも(だとしたらかなりビターなのではと疑いのあなた、正しい)

そして結末は読んでくれ!

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